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■照明が演出するシーンと、人間の眼
K: では、具体的な照明のお話を伺います。例えば、子供が学習するのに理想的な明かりとはどのようなものですか?
M: それはとても幅広くて、一言で説明するのは難しいのです。
まず、光には医学的なことも関係します。光環境が良くないと、目が悪くなる、肩が凝る、頭が痛くなる、心の病に繋がるなどの影響があります。そのためには、まず良い視力を持つことが第一です。その良い視力を維持するために、照明環境を良くするのです。
私は、年齢と共に近くは見えにくくなって来ましたが、遠くの視力は今でも2.0あります。色や明るさの微妙な変化を見極める必要があるため、眼が悪い人は残念ながら照明デザイナーにはなれませんね。
K: まずは、眼だと。
M: そうです。
そもそも、眼は「黒に戻ろうとする」性質があります。例えば、太陽光を見た後に白い壁を見ると黒いシミが見えますね。これは残像現象と呼ばれるもので、許容量を超えた光に対して、反対の黒で安定させようとするのです。それを利用するのが照明デザインなんですね。
K: おもしろいですね。
M: 例えば、コンビニはむき出しの蛍光灯が点いていますが、そこから出る光を見続けて店に向かうことで、眼から黒が出ます。すると、商品を取り上げた時に黒が被って安っぽく見えることになります。安っぽく見えた方がコンビニの商品が売れるので、敢えて眩しさを表に出している訳です。
K: なるほど。眼の持っている力を利用して商品を際だたせているのですね。
M: はい。それらを利用して、人の居心地を良くしたり、人の行動をコントロールするのです。
最初の子供部屋の例だと、眼が黒に戻らないように明暗のコントラストを調整したり、目に良くないフリッカーと呼ばれる波長のゆらめきを安定させることが大切です。部屋を暗くして手元のスタンドだけで勉強する人がいますが、あれは良くありません。コントラストが強すぎて眼が疲れます。ある程度部屋を明るくしておいてスタンドで光を補足すると、視力が保てます。
K: それらの手法を理解した上で空間演出を考えると、商業施設や医療機関、教育機関、一般家庭に応用ができるわけですね?
M: 今、とあるスーパーマーケットのお仕事をさせていただいていますが、生鮮食料品を全てシミュレーションルームに持ち込んで実験しています。牛肉と豚肉、鶏肉ではやはり肉の色が違いますし、青魚と赤い魚も違います。それを実験して結果を店舗に反映させると、いくつかある店舗の内、私が担当させていただいた店舗だけが売り上げが良い。最初は分からなくても長い時間を掛けると結果が出て、照明が大事だと気づいていただけます。
照明の無いクライアントはありませんから、新しい仕事が来ると、1つ覚えて詳しくなれます。その職業が、そこにいる人が答えを出してくれるのです。
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